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●「チャイナシンドローム」冒頭 ご紹介 ------------------------------------------------- 「早上好!」 「早上好!」 さわやかな朝の異国挨拶が、電線だらけの青空にこだまする。 関帝様の廟下に集う乙女たちは、今日も天使のような無垢の 笑顔で、背の高い朱雀門をくぐりぬけていく。 汚れを知らない心身をつつむのは、今日は鮮やかな色の旗袍。(チャイナドレス) スリットから脚は出さぬように、旗袍の裾は翻さないように、 ゆっくりと歩くのがここでのたしなみ。 横浜中華街、ここは中華の園。 この格好は、どうかと。 真美は縮こまるような姿勢で、周囲の視線から自分の姿を隠そうと、必死だった。 何故なら、この衣装ときたら、人に見られるためにあつらえられたような、そんな服だったから。 「お姉さま。 必然性がありません」 消え入りそうな声で言うと、彼女のお姉さまたる築山三奈子さまは、無駄にグラマラスなボディを (無意識的に)誇示しながら言い放つのである。 「変装よ」 言い切った。傲然と胸を張る彼女の姿は、その紫地の艶やかなドレスと相まって、とても絵になった。 「そうか、変装なんだ」 自信溢れる三奈子の言葉に、感嘆のため息をもらす、部員A。 小柄で某有名ネズミな髪型の彼女は、真美や三奈子と同系統の服装ながら、あつらえたように その衣装が似合った。もっとも、綺麗と言うよりは、可愛いというか。 「おい、見ろよ、チャイナだぜ」 囁く男性の声に、思わず真美は振り返り、叫んでいた。 「い、言うなーッ!!」 ---------------------------------------------------- |
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